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この森を抜けた先に、お姫様が眠る城がある
そんな御伽噺を確かめたくて、私は森に入っていった。
森に入って数時間、迷いに迷った挙句――私は其処に辿りついた。
――月光の下で佇む、静謐なる一つの城がある。
「やぁ、迷ったのかい?」
そんな幻想的な背景を背に、一人の黒い男が立っていた。
言いながら、歩いていくるのは爽やかな笑顔を浮かべる、青い瞳をした一人の青年。
正直頭の中の現実感が、目の前の光景に追いついていないが――――
ただ、早く此処から逃げろ、という警鐘が止まらなかった。
いつの間にか歩いてきていたのか、目の前には男がいた。
私は何ていったらいいかわからず、何故か逃げ出したい予感に身が震えた。
「――――ごめんね。この場所を、これ以上人に知られるわけにはいかないんだ」
音も無く、私の胸にナイフが突き刺さった。
痛みも何も無い。ただボロボロと体が崩れていく現実。そう、消滅感だけが、この身を支配していた。
意識が断絶する刹那、御伽噺には、もう一つの噂があったことを思い出した。
その城には、お姫様を護る騎士がいるという――――
騎士は城を振り返る。
「ここだけは、俺が護り通すよ。それが俺の、お前に対する代償《つみ》なんだから。なぁアルクェイド――」
――――彼女を殺した代償は此処に。贖うべき罪は永遠に在り続けるだろう。
「パンドラの唄〜前奏曲」 第7.5話 『代償《つみ》の在り処』