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 「―――――が、はっ」
 ぎりぎりと首が音を立てて締め付けられる。その力は尋常ではなく、まるで万力にでもかけられているかのよう。
 このままでは、数秒を経たずにして、青年の絶命は必定だ。
 青年は見る。苦しそうに息を吐きながら、それでも、目の前の光景を見定めるように見つめ続ける。
 眼に映るのは、一人の女性。記憶が無い自分にとって、唯一知っている人間でもあり―――――共に必要としてくれる。真っ白な自分の、救いだった。
 いつも優しかった彼女。
 いつも笑ってくれた彼女。
 名も思い出せないような自分を必要だと言ってくれた彼女。
 そんな彼女に、今殺されようとしている。
 何故、どうして、そんなはずは。理不尽。疑問。否定。肯定。
 当然として沸き上がるであろう心情。

 ―――――青年の心に、今在るのは、そのどれでも無かった。

 在るのは、ただ一つ。

 (……―――――ああ、俺は死ぬのか)

 それだけ。
 目前に迫った明確な終わり。感情の果て、本能という地平線の奥に刻まれた原初の衝動。
 青年のソレは、あまりにも純粋だった。
 死にたくないと騒ぎ立てることも、狂騒に走ることも無い。ただ、ただ目の前にある死≠ニいう事象を見つめ続ける。
 あまりにリアルな手触り。熱を帯びるわけでもなく、冷め切ったものでもなく、あるがままの現実≠ェ其処にある―――――

 ―――――その事実に気付き、青年は初めて、恐怖を感じた。

 死ぬ、という恐怖ではない。誰だって死にたくない。考えられる最大の恐怖。
 生物ならば、まず絶対的な恐れである死そのものに対し、何の感慨も湧かないことこそが、青年は戦慄したのだ。
 恐怖も無く。畏怖も無く。
 青年には、単なるモノ≠ニしか死を捉えることが出来ない。
 (何だ、これではまるで―――――)
 ―――――人として、壊れているみたいじゃないか。
 そこで青年の首を絞める握力が強まった。中断される思考。漂白される脳髄。。
 「が! っぁ」
 (このまま、死ぬのか……俺は、何も分からず、何も残せず)
 残された時間は二秒か、一秒か。それとも刹那か。
 時が加速し、圧縮された空間の中で、青年はそれでも抗う。
 目前の暴力に対し、ではない。
 死というものに恐怖を抱かない自分に対して、だ。
 自分は真っ当な人間である(・・・・・・・・・・・・)人として幸せになることが出来る(・・・・・・・・・・・・・・・)、と。
 ―――――俺は、壊れてなど、いない。
 そう思わなければ、押しつぶされる。人としての幸福を求めているのに、それを決して手にすることは出来ないという矛盾に。

 だから、俺が居るんだろ?

 声が、聞こえた。
 自分の心の最奥、否、心の裏側から。
 コインの裏、自らの影。つがいにして同一。同一にして真逆。もう一つの思考回路が目を覚ます。
 一つだけ、思い出した。
 いつだったのだろうか。薄暗い教会。ひんやりとした空気。神を崇める聖なる、そして邪悪な箱庭。
 美しき天上の声。それを紡ぐ、異形の聖女。

 『ああ――――単純に貴方が気に入ったからですよ。両極端の用途。完全に別物としての思考回路。――そうでもしなければ存在できない、矛盾。その苦悩、懊悩。人でありながら人在らざる能力を持ち、自らのエゴのために他人を巻き込み、更なる力を求める姿。
 ……ああ、なんて芳醇。まるで極上のワインのように薫り高い。人間という生物の括りの中で、その不安定な在り方は、とても――――面白い=x

 ガキン、とスイッチが入る。眠っていたもう一つの思考回路が覚醒を始める。
 矛盾を考えるのは、お前ではない(・・・・・・)
 お前が幸福を背負うのならば、俺は絶望を糧とする。お前が生に意味を見出すのならば、俺は死に理由を見出す。
 一つで二つの思考回路。記憶の有無など関係ない。こんなことで記憶が戻ることなど有り得ない。
 コインが裏返ること。そんなものは。
 ―――――青年が存在していること。ただそれだけで引き起こされる現象に過ぎないのだから。

 確かにお前は、俺は死ぬことなんか恐れちゃいないさ。そんなものは何処にでも転がっている。だがな、許されていないんだよ。そんな諦観、死なんていう緩い救いがお前には許されていない。お前は生き抜いて、生き抜いて―――――その果てに、醜く朽ちる。―――――それが、俺たちに残された道なんだよ

 先もない。後戻りも出来ない。希望もなく、絶望もない。
 ただ単一の目的のために、全てを切り捨てる自動機械。それこそが―――――

 「あぁ、どうやら、俺は此処で死ぬわけにはいかないようだ」

 青年は笑った。
 体全身をバネにして、足を思い切り蹴り上げる。
 首の骨が折れる寸前、その体ごとサラの両腕は首から離れた。
 ドン、という鈍い音。
 青年の渾身の蹴りをまともに受け、壁に背を強打したのにも関わらず、サラはまるで意にも介さない。ただ、体を押さえつけるのに必死なようだった。
 涙を流しながら、苦しげな声を、紡ぐ。
 「ごめんなさい、ごめんなさい……駄目なの。もう、抑えられない。これ以上は耐えられない。だけど、だけど……貴方を殺すなんてこと、もっと耐えられない―――――」
 青年は思う。
 ……きっと、あれでも手加減したのだろうと。今の彼女の腕力ならば、人間の首など、刹那で折ることが出来る。だが、それをしなかったのは―――――
 愛。
 ああ、なんて尊い響きなのだろう。人が見る最上級の夢、最強の幻想だ。
 「お願い……もう私の前に現れないで。でないと私は、きっと躊躇いもなく貴方を殺してしまう―――――」
 そう言い残し、サラは去っていった。窓を強引に破り、割れた硝子の音と共に、夜のロンドンへと。
 ひゅう、と夜の大気が青年を撫でる。
 スイッチが切り替わる。コインの裏が表にひっくり返る。
 「―――――あぁ、俺も貴女を愛している」
 このまま、二人でずっと暮らせることが出来たら、どんなに幸せなのだろうか。
 一緒に食事をして、一緒に買い物をして、一緒に彼女の好きな唄を歌う。
 だけど、それは許されない。許されないモノだと知った。
 自分は壊れた人間だ。壊れた歯車は、いつか全てを巻き込んで崩壊する。
 やるべき何か=Bそれを思い出さない限り、自分は自分たり得ない。自分が壊さなくても、もう一つの思考回路が、全てを殺す。
 ならば、今。

 ―――――俺が彼女に出来ることは―――――

 「―――――サラ。君の幻想を、俺がこの手で、殺す」

 青年は、自分の全てが詰められているだろう、いつかサラが必死で隠した机の引き出しに手を掛けた。サラは隠し通せていると思いこんでいるようだが、事実は違う。そのあまりに必死な隠蔽が、逆にソレを浮き彫りにさせていた。その事に不審を抱かない人間はいないだろう。
 だが、青年はソレをあえて見逃していた。
 自分には必要ない。自分には過去なんて必要がない、と。そう思いこんで。
 ……結局は、いつか夢で見た時と同じになってしまった。
 青年は、宣言のように言い放つ。

 ―――――俺は、もう一つの自分から逃れる事など出来ない。
 だから、俺は―――――

 この手に全てを、取り戻す。
 (げんそう)を、殺すために、その力を。

 「ごめんな、サラ」

 青年は、引き出しを、開ける。
 静かに闇が囁いた。

 ―――――――――――――おかえり、殺人貴


/Count down 1
 Side:B
 Wish ――星に願いを――



 一人と一匹。ネコと白衣を着た女性という珍妙な二人組が、夜、ロンドンの街中を歩いていた。
 もう深夜と呼んでも差し支えない時間帯。人通りはほぼ無く、二人―――シオンとレンは悠々と歩みを進める。
 しかし、彼女らの表情は緊の一文字に結ばれている。視線は何処か落ち着かず、何かを焦っているようにも見えた。
 今、ロンドンで殺人を行っている『偽・真祖(デミ・アルテミス)』は、双子の他にもう一人存在する――――――――その事実が、シオンを焦燥へと駆る。
 何故、こんなにも心がざわめくのか―――――言いようのない不安に、シオンは浸食されていた。
 ただ単純に『偽・真祖(デミ・アルテミス)』に恐怖しているわけではない。問題はタイミングなのだ。
 赤い月=B霧生朱美。倒れた衛宮士郎。記憶を失った七夜志貴。双子とは別の、もう一人の『偽・真祖(デミ・アルテミス)』。そして、それが判明した今というタイミング―――――――――――――
 全てが出来過ぎている、とシオンは思う。
 どこまでが偶然で、どこまでが必然なのか。一見してみれば、霧生朱美が全ての原因だとも思える。だがしかし、同時にそうではない≠ニいう齟齬を感じていた。
 これが全て久遠寺アリスの仕業だとしても、出来過ぎている。まるで偶然も必然も掌中に収めているかのように世界は動いている。
 偶然と必然、思惑と行動が、奇跡のようなバランスだ。
 (何かおかしい、どこか間違っている――――――本当に? だが)
 是と非、肯定と否定がどこまでもせめぎ合う思考。
 違和感がどこまでもシオンに泥のようにまとわりつく。その気持ち悪さが、シオンの心に焦燥という感情で現れる。
 その時、レンが隣で一声、鳴いた。まるでシオンを諭すように。賢者が、若輩者に教えるように。
 ―――――――焦ってはならない、と。
 シオンは肩を竦め。
 「……そうですね、レン。今は、やるべきことだけをやらなければ」
 そう言って苦笑した。
 (しかし情報が少なすぎる……結局はこうして、夜の街を歩き回ることしか出来ない)
 錬金術師、なんて大層な名前で呼ばれているが、何も出来ない自分にシオンは歯がみする。
 と、その時―――――――――

 久遠寺アリスの結界が発動したのを、シオンとレンは感じ取った。

 ある一定の空間を世界≠サのものから切り離す、魔法じみた異界。それは正しく、『偽・真祖(デミ・アルテミス)』が現れる予兆に他ならない。
 「…………来る」
 シオンが呟くと同時。

 ご、とコンクリートを砕いて、一体の『偽・真祖(デミ・アルテミス)』が空から降りてきた。

 金色に輝く瞳。黄金色にたなびく長い髪。普段着だろう、白のワンピースから覗くのはひび割れた四肢。そして―――――さび付き、壊れた一対の翼。
 その美しさ。そのおぞましさに、背筋が震える。その姿は正しく。
 「―――――天使(ばけもの)
 人ではない、異形のモンスターだった。
 「ア、ア、ァァァ……」
 苦しそうに喘ぐ『偽・真祖(デミ・アルテミス)』。天を仰ぐその姿は、まるで神に祈りを上げているようだ。
 (これが、三体目の、『偽・真祖(デミ・アルテミス)』……!)
 シオンは確信する。自分が以前見た同一存在―――――クリスとは様子が違うようだが、目の前のモノは間違いなく『偽・真祖(デミ・アルテミス)』だ。そう確信する。確信するが―――――
 ―――――シオンは、一歩も動けなかった。
 質こそ同じだが、感じられる魔力の桁が違う。違いすぎて、本当に、クリスと同様の存在なのかと疑うほど。
 動けば、死ぬ。
 その恐れ、原始の衝動、死への戦慄がシオンの体を鎖で縛り付ける。
 自らの銃、バレル・レプリカに手を掛ける。込められた弾は神殺し(ロンギヌス)=Bだが、レプリカである以上、本物に劣るのは必定。
 最早限りなく本物に近づいた『偽・真祖(デミ・アルテミス)』にどこまで通用するか―――――
 瞬間、脳裏に閃光が走った。
 ひび割れ、髪の色も違うが、あれは……昼間、記憶喪失の志貴と共に居た女性ではないのだろうか―――――そして、その女性が、今『偽・真祖(デミ・アルテミス)』として目の前に存在している。
 「ま、…………さか」
 最悪の想像。志貴は、既に―――――

 気付けば、バレル・レプリカを、殺意と共に『偽・真祖(デミ・アルテミス)』に向けていた。

 遂げられない約束。いつかの面影。私の友達―――――あまりの喪失感に銃が震える。まだ志貴が死んだと分かったわけではないのに。何故自分はこんなにも動揺しているのか。
 答えは、簡単に出た。
 (ああ、私は、こんなにも彼を失いたくないと、思っていたんだ……)
 おぉん。殺気に気がついたのか、天に一哭きすると、ゆらりとシオンの方へと向く。
 「っ―――――!!」
 刹那、シオンは殺された(・・・・・・・・)
 あまりの殺気に、あまりの飢えに、錬金術師の緻密な計算全てで、シオンは自らが殺されるイメージを見せられた。
 どう足掻いても、どう動いても、全ての未来は殺されるという選択肢しかない。それはつまり自身の死だ。
 …………そう、目の前の化け物は飢えていた。
 シオンは直感的に理解してしまった。どうして、ここまで育ってしまったのか。何故ここまでの力を手に入れたのか。他の『偽・真祖(デミ・アルテミス)』とは隔絶した能力差、その理由。
 それは、圧倒的なまでに引き絞られた飢餓だ。
 どれだけ彼女は我慢したのだろうか。崩壊すら招くほどの閉塞。自己の能力を封殺することによって、更にその練度を上げたのだ。
 ―――――ぎりぎりまで押しとどめた衝動。それが解放されたが故。
 ぶるり、と背筋が震える。その事実は最早人という範疇を超え、化け物という領域をも凌駕している。生物そのものが持つ生きる≠ニいう衝動を抑え続けたのだ。
 生の本能すら放棄した何か。それ故の、身が凍り付く絶望感―――――!
 つ、と金色の化け物は指を上げる。指先に尋常ではない魔力が集中していく。
 その瞬間。ぴくりとレンがあらぬ方向へと視線を向けた。
 「―――――――――――――あ、あぁ」
 普段、絶対に言葉を発さない少女の声。それはあふれ出る歓喜故。
 シオンも、『偽・真祖(デミ・アルテミス)』でさえも、驚愕に目を見開く。
 視線の先――――静かに舞い降りた、その人物は――――――

 蒼き目を宿し、神をも殺す刃を携えた、紛う事なき死神―――七夜志貴だった

 刹那、『偽・真祖(デミ・アルテミス)』―――――サラ・ハミルトンが、虚ろな目を見開き、金色に輝きだした。
 苦しげに呻くその姿と同調するように、びくんとレンの体が跳ねる。
 レンの小さな体から、魔力光が迸り―――――――――――――

 ―――――――――――――そして、その場にいる全ての人間が、一刻の儚い夢を見た。

 * * *

 ――――When you wish upon a star
 Make no difference who you are
 Anything your heart desires
 Will come to you――――

 Wish upon a star(ほしにねがいを)、と詠うこの唄が私のお気に入りだった。
 だって、お星様が願いを叶えてくれるなんて、ロマンチックで素敵じゃない?
 …………いや、きっとそれは違う。そんな綺麗で、可愛い理由なんかじゃない。もっと醜くて、汚らしい欲望故だ。
 祈るだけで、願いが叶う。
 そのあまりにも他力本願な部分に、私は惹かれたのだ。神なんて目に見えないモノじゃなくて、限りなく遠くにありながらも、確実に瞳に捉えられる星達は、何だか本当に願いを叶えてくれるような気がしたから。
 自分は何も出来ないから。だから、誰かに頼っていたかった。この世界のルールは等価交換。何かを努力しなければ、何も得ることが出来ないこの現実で、あまりに醜いその願望。
 劣等感だらけの自分。黒い肌と白い髪は、各地を転々とする私にとって、足枷にしかならなかった。
 蔑み、いじめ、差別。
 憎いなんて思ったことは一度もない。きっと自分が劣っているのが悪いんだろう。
 そう、人と違っているではなく、劣っている。圧倒的な差異。運動も勉強も特に出来ず、怒られてばかりの毎日。
 だから星に願った。力が欲しい=Aと。せめて人並みに何でも出来るように、と。
 だが、そんなことが叶えられるはずもない。星が願いを叶えてくれるなど、御伽噺の中だけだ。
 仮に星が願いを叶えてくるモノだとしても、こんな努力もしない他力本願な願いなど無視されるに決まっていた。
 何がしたいわけでもなく、何をし続けるわけでもなく、劣等感ばかり抱えて、淡々と生き続けてきた。
 そんな時、彼に出会った。
 ハリー・ウィンストン。
 彼は実に変わった人間だった。
 人と孤立した生き方を送っている私に、何の躊躇もなく話しかけてきたのだ。
 『――――――そんなところで一人で居ても面白くないだろう?』
 そう言って、彼は私に笑いかけた。
 ビックリした。面白いとか、面白くないとか考えたこともなかった。ただ自分は劣っている、とそんな劣等感ばっかり抱えて生きてきたから。
 何より、そんな私に話しかけてきたこと自体が、驚きだった。
 ハリーは正義感の固まりのような人だった。私に話しかけてきたのも、私が一人で寂しそうにしているから、だそうだ。
 困っている人は放っておけない。
 誰かが泣いているのを見ることはイヤだ。
 皆笑っていられるような世界を、自分は夢見ている。
 ――――――ああ、なんて眩しい。なんて綺麗な理想なんだろう。でもそんなのは間違っている。そんなのは全てを持ち得る人間が見る夢でしかない。
 誰かに頼ってばかり居る私には、とてもじゃないけどそんなことは願えない。
 だから言った。それは間違いだと。それは傲慢なものでしかないと。

 ああ、そうだね。――――君が言うように、僕は間違っているのかも知れない

 だが、そんなことは既に彼は知っていた。それでもなお彼は――――――

 僕はどうしても無視できないんだ。泣いてる人、困っている人、それがどんなに偽善だとしても、自分が正しいと思ったことを裏切ることは出来ない。サラ、いつか君にも分かるときが来るよ――――

 その、幻想(ユメ)を見続けると、断言したのだ。
 その事に、どうしようもなく惹かれた。『正しいと思うこと』、それ自体が見つからない自分にとって、彼はあまりにも眩しすぎたから。
 ――――――そう、人間は、やるべき事を見つけるために生きている。そうして見つけた事は、どんなに歪な夢でもめざし続けられるのだ――――――
 きっと人は、星になんか頼らなくても生きていける。そう実証してくれたのが、彼という人間に他ならなかったのだ。
 しかし、現実は残酷で無慈悲な結果をハリーに突きつけた。
 ……多くの人が死んだ。表だって告げられたことは、ガス漏れによる爆発事故。だが、事実はそうではない。
 魔術師。
 そう呼ばれる人間を、私が初めて知った時だった。
 同時に、ハリー・ウィンストン、彼もまた魔術師だったということも知った。
 何もかもが焼け落ちた瓦礫の中で、彼は涙を流して蹲った。
 静かに、訥々と語る。
 ……こんなことは、初めてじゃないんだ。自分の無力さを、こんなにも痛感したことは。死んでいく人たちを目の前にしながら、何も出来ない。じゃあ、一体僕の生きてきた意味は何なんだ! 誰も救えない、誰一人として笑わせる事が出来ない、こんな自分に意味なんかない。
 ――――――ああ、そうだ。僕は力が欲しい。何者をも救える、そんな力が僕は欲しい
 それに、どう答えれば良かったのだろう。
 私が付いてる、とでも言えば良かったのだろうか。彼が生きた証として、今の私があると。
 は、と自嘲する。
 そんなことがあるはずない。何故ならば、彼の生きてきた証とは彼が決めることであり、その指針を私が決められるはずがない。
 そうだ。綺麗な彼の理想。全てを助けたいと願う、その幻想に私なんかが踏み入って良いはずがない。
 何も出来ない私。いつも星に願うばかりの自分。汚れた(いろ)は決して彼の理想(いろ)を蹂躙してはいけない。
 ただ遠くから見つめることが出来れば、それでいい。たまに振り返って、私を見てくれるだけでいい。
 それはもしかしたら恋愛感情というよりも崇拝に近いモノだったのかもしれない。それならばそれで構わない。どうしようもなく彼に惹かれたのは間違いのないことだから。
 ―――だけど、それはやっぱり間違っていたのだ。彼が『力を手に入れる』と言って、アメリカに飛び立とうとしたとき、私は止められなかったのだから。止めるだけの感情を持っていなかったのだから。
 今度こそ、君を心の底から笑わせてみせる。
 そう言って、彼は行った。
 もし私が真っ当な感覚を持った人間ならば、ここで泣いて喚いて彼を止めれば、あんなことにはならなかったのだろうか。
 ああ、なんて無意味なイフ。私はまだ、何かに依存しなければ生きていけない。
 そうして彼は単身アメリカへと旅立ち――――――そして一ヶ月後、ロンドンへと帰ってきた。物言わぬ死体となって。
 私は、激昂した。
 それは恋人が殺された、というよりも神聖視していたものを壊されたという狂信者のソレに近かった。どちらにせよ許せなかった。
 彼の死について、徹底的に調べ上げた。魔術協会は何も言ってこない。ただ死体の傷跡から、魔術協会の魔術師ではなく聖堂教会の代行者がやったということくらいしか分からなかった。
 ――何故教会の代行者が?
 少しずつ調査が進むに従い、明らかになっていく、彼の顛末。
 結論から言うと、彼は既に人ではなくなっていた。
 『偽・真祖(デミ・アルテミス)』。
 その名を知ったのは、まだ幾ばくか後になってのことだけど――――それでも彼が理想を求めるがあまり、人を捨てたということを知った。
 その原因は一体何なのか。魔術協会も散々彼の研究室を引っ掻き回したが、結局は分からなかったようだ。
 だけど私にはある程度見当が付いていた。
 彼が生前よく会っていたという女性――――今回の渡米も彼女の招待があってこそだ。
 ――――久遠寺アリス。
 その名前を、私は心に刻みつけ、そして彼の足跡を辿るように私もアメリカへと発った。
 ……この時点で私は久遠寺アリスが見つからないことをある程度覚悟していた。何せ、現在に至るまで魔術協会・聖堂教会共に彼女を発見するどころか、その痕跡すら見つけていない。
 ロンドンの連続殺人事件を発端とする一連の『偽・真祖(デミ・アルテミス)』の事件の首謀者は、自らが名乗り出た事以外にその姿を現したことがない。
 ――――彼女は遊んでいる。人形遊びに興じている子供のように、世界を弄んでいるのだ。
 だから、つい近年、たかだか初歩の治療魔術を囓った程度の私に彼女が発見出来るとも思えなかった。

 こんにちは、貴女が、ハリーの言っていたサラ・ハミルトンさん? ようこそ、混沌の地アメリカへ。歓迎するわ

 だが、相手は私の想像を遥かに超えていた。まさか空港に降り立った途端に、彼女がニコヤカに笑いかけてくるなんて思いもしなかったのだ。

 私は振り向き―――――――
 それから私は。それから、それから―――――――――――――


 ―――――――――――――――


 そして、彼は死んだ。『偽・真祖(デミ・アルテミス)』となったハリーは、何を果たすわけでもなく、単なる化け物として討伐された。
 アリスから、その顛末を聞かせられた。彼は自ら進んで化け物になったのだと。私の協力者になってくれたのだと。勿論、そんなもの信じられるわけがない。私の憎しみはそんなものでは鎮火しない。
 私はまず、彼女に取り入ろうとした。久遠寺アリスに信頼させ、そのうち後ろから襲うという浅はかな考えのためだ。つまり復讐―――いや、それは違うかも知れない。
 そんな複雑なことではなく―――もっと単純でわかりやすい。きっと私は、彼と同じ存在になりたかっただけ(・・・・・・・・・・・・・・・)
 ハリーと同じ存在になって、同じ立ち位置から世界を見たかった。そうすれば―――彼のことをもっと理解できる気がしたから。
 ―――だが、それは一瞬にして瓦解することになる。
 私は『偽・真祖(デミ・アルテミス)』になってしまった。もう戻れない。戻るべき場所を、私は失った。だがそれは久遠寺アリスへと繋がる唯一の道だ。そこに疑問の入る余地があるはずがなかった。
 そんなときだ。そんなとき―――私はハリーからの手紙を見つけてしまった。

 ―――君だけは、どうか幸せなままで

 ガランドウの部屋の中で、ポツンと私に宛てられた手紙は、静かにその存在を主張ていた。
 その文字は、私の住所を書く寸前で、力尽きたかのように止まっていた。
 ただそれだけ。手紙と呼ぶにはあまりに烏滸がましい、そんな一行のみの文。
 だがそれで理解してしまった。
 私が間違っていたのだと。
 ハリーはこの末路を分かっていながら、化け物へとなったのだと。
 私は泣いた。久遠寺アリスの言動には、何の間違いもなかったのだ。
 ―――ああ、なんて私の愚かしいことだろう。私の復讐は何処にもなかった。
 ハリーは最後の最後まで、私を案じてくれた。それにも関わらず、私は無考えにも彼の後を追い、そして同じ化け物になった。
 彼の最後の望みを、私は、自ら切って捨てた。
 その事実が私から、あらゆる感情を取り去ってしまった。
 私には、何も出来ない。
 出来ることなど何もない。
 残ったのは、『偽・真祖(デミ・アルテミス)』と成り果てた、この体だけ―――――――――

 だから私は、誰にも関わらず、静かに死のうと思った。

 愚かな私に生きている価値など無い。どこまでも他人に依存し、その末路がこれだ。あまりにも無様で惨めだった。生きるために、初めて人を殺したとき、そう悟った。
 ロンドンに戻ってから、耐えきれなくなって、もう一人殺した。
 違う。死ぬのは私の方だ。
 死は怖い。けれども、それ以上に、他人の死を背負うことが恐ろしかった。段々と積み重ねっていく命が、私に囁く。
 お前は生きていてはいけない、と。
 もうこれ以上は耐えられない。だから、彼と共に過ごした家で、静かに死のうとしたとき―――――――――

 ―――――――――私は、記憶を失った、とある青年に、出会った。

* * *

 ザザザザザ、と大量の雑音と共に、映像が切れた。
 その場に居る全員――サラ・ハミルトン以外の――が、微動だにせず今の映像を反芻する。サラはただ涙を流しながら呻いている。
 レンは気を失って倒れている。急な魔術の発現による反動だろう。
 一瞬、目眩に足下が揺れたが、それでもシオンは思考する。
 あれは過去だ、と。
 とある切っ掛けがトリガーとなり、莫大なサラの感情が魔力と共に溢れだしたのだ。それにあてられた魔力探知に敏感なレンが、自己防衛のために魔術を発動しようとするも暴走。自己特性である夢≠ニいう形になったのだ。
 (ならば今の映像は、目の前の偽・真祖(デミ・アルテミス)』――否、サラ・ハミルトンという女性の記憶か)
 彼女の人生、それはコンプレックスのせいで他者に依存することでしか自己を保てない、悲惨なモノだ。全て生まれついての環境が原因の、自らではどうすることも出来ない圧倒的な理不尽。
 それでも、シオンは思う。
 同情はする。可哀想だとも思う。だが、そんな理由で人を殺していいはずがない。
 肝心の久遠寺アリスと出会ってからの映像がノイズで掻き消されてしまったが、それでも彼女が現在『偽・真祖(デミ・アルテミス)』である以上、そこに理解など入り込む余地などない。
 (そうだ……人並みの幸せを求めているくせに、何故人を捨てるのか)
 シオンは理不尽だと理解しつつも、怒りを抑えることが出来なかった。自分は望んで吸血鬼になったわけではない。そこから抜け出そうと必死に足掻いているのに、どうして目の前の女はそれをあっさり捨てられるのだ、と。
 ああ、それがどうしても気にくわない――――――――――!
 怒りに身を任せ、バレル・レプリカを構える。
 だが、その挙動は。
 ――七夜志貴がナイフを振るう動作によって殺された。
 シオンの目の前で空を疾駆する刃。そのあまりにも洗練された動作にシオンは一瞬目を奪われる。
 「……レンのことを看てやってくれ。それはシオンにしかできないことなんだ。頼む」
 静かに、志貴はそう言葉を紡いだ。確かに、二人の名前をはっきりと。
 「志貴、まさか貴方記憶が――――――――」
 言い終わるや否や、志貴は駆け出した。目の前で呻き苦しむ『偽・真祖(デミ・アルテミス)』――サラの元へと。
 サラは敵意を感じたのか、おぉん、と一鳴きし、志貴の方へと向いた。
 その顔に、表情という物は刻まれていない。感情を亡くした目だけが志貴を捉えている。
 志貴は思う。
 ――既にサラは人ではない。人としての機能、感情や心と言ったモノを全て亡くした、ただの殺戮機械、残り滓だ。だが、それでも彼女の視界には志貴しかない。
 求めているのだ。彼の存在≠。彼女が青年を愛した故に。残り滓はただ、その情動のみを以て動いている。
 ならば。

 「サラ、俺は――(きみ)を殺す」

 そして、その罪を背負って生きていく。そのために、殺人貴(じぶん)は存在しているのだから。
 駆けながら志貴は視る。
 その視界を。その世界を。
 記憶を失っている時には見えなかった、世界の真実が見える(・・・・・・・・・)
 死。
 ――死だ。
 コンクリートの地面に見える。電柱に見える。ガードレールに見える。シオンに見える。レンに見える。
 線と点で構成された死≠ェ、ありとあらゆるモノに見える。
 (あぁ、俺は戻ってきた。この世界に、戻ってきてしまった)
 だが、それに後悔はない。直死の魔眼――異端の極みであるこの両眼こそが、自分の全てなのだ。自分の全てであり、始まりだ。
 そうだ。この眼を持ったおかげで、俺はアイツと出会えた。そこに、後悔など入る余地があるはずがない。
 きっと記憶を失っていた時のことは、夢のようなものだろう。幻、蜃気楼、御伽噺、白昼夢、胡蝶の夢、何でもいい。
 あれはもう一つの未来。もし自分が直死の魔眼なんてものに目覚めずに、平穏な人生を送れているという一つの未来だ。
 なんて平穏。なんて幸福。あれこそが自分が求めているものであり、こうしてナイフ片手にロンドンを駆けている現実こそが間違いのように思える。
 だが違う。それは決して違う。
 簡単な理由だ。
 (――――――――その未来には、アイツがいない)
 勘違いしてはいけない。
 前提を間違えるな(・・・・・・・・)
 『遠野志貴』ならば、それでも良かったのだろう。だが、今の彼は『七夜志貴』だ。故に彼女≠ェ居ない世界など考えるだけ無駄である。
 七夜志貴の全存在は彼女≠前提として成り立っている。故の名、殺人貴。ただ一つの貴い目的のために殺人を重ねる鬼。
 だから、サラと共に過ごした、この一週間は――在ってはならないのだ。
 でなければ、揺らいでしまう。崩れてしまう。七夜志貴という存在が。
 方程式が成り立たない。問いと答えが矛盾する。間違っているのは世界か自分か。答えを正すためには余分な変数を切り捨てるしかない。
 サラは青年を愛した。青年はサラを愛した。例え、志貴が記憶を失い、何もかもを忘れていたとはいえ、それは間違いなのだ。
 その世界は間違っている。解が間違っているのならば、問いそのものを無くさなければならない。
 ――――否。
 は、と志貴は自嘲する。
 切り替わった思考回路が言う。そんなことはどうでもいい、と。そんな余分なことを考える必要性もない、と。
 七夜志貴が、サラ・ハミルトンを殺す。
 そんなこと、愛とか答えとかは関係がない。当たり前のこと、考えるまでもない絶対的義務。
 何故ならば――――――――――――

 「…………お前が久遠寺アリスの狗である以上、俺が生かしておくわけないだろ?」

 ニヤリ、と不敵に笑いながら、言った。
 全ての幻想を断ち切るために、そして何よりも自らの仇敵を殺すために。
 七夜志貴は、その刃を振るった。

 目線だけは志貴のほうを向いてはいるものの、サラの体に力は入っていなかった。
 ただ体をあるがままに自然に任せているだけ。つまりは隙だらけだった。
 レンの治療を進めながらも、シオンは見ていた。七夜志貴が弾丸のように飛び出し、そして刹那の速さでナイフを振るうところを。
 そのままナイフはサラを捉え――――

 ――――そして、甲高い金属音が響いた。

 「!?」
 驚きに目を見開くのは志貴だ。だが、その挙動は止まらない。冷静に距離を取ろうと、後ろに跳ねる。
 流れるような動作に思考を乗せる。
 今起きたことを分析、解析する。
 志貴の振るったナイフは、サラの翼によって阻まれたのだ。それは、志貴の振るうナイフよりも圧倒的に速い速度で展開された。
 両翼による絶対防御。それこそが『偽・真祖(デミ・アルテミス)』サラ・ハミルトンの能力だった。誰も傷つけたくない、青年を傷つけたくないという抑圧が生み出した紛れもない彼女の力。
 だが既に感情を亡くしてしまったサラには、その由来など関係がない。そのまま、志貴の殺意に反応するがままに、その能力を行使する。
 ご、と志貴を旋風が薙いだ。
 (…………何、)
 だ、と思考する前に、既に彼の体には――――無数の傷が刻まれていた。
 その足が地面に着地すると同時に、傷跡から血が吹き上げた。
 「がっ――――!」
 「志貴!!」
 志貴は崩れ落ちそうになる体をギリギリの所で踏み止める。あまりの速度で斬りつけられたのか、感覚が追いつかない。音が後から聞こえてくるように、痛みが一拍子置いて襲ってくる。
 「――――あれは」
 だが、それを気にしている間もなく、事態は進む。
 「アアアァァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
 天に向けて吼えるサラ。その両の翼に異変が起きていた。
 翼から、翼が生えていた。生まれた翼から、更に翼が、更にその翼から翼が――――――――
 まるで木の枝のように細分化されていく両翼。
 それが、サラを守るようにして暴れ狂う。さきほど志貴に無数の傷を負わせたのがコレだ。
 生まれいく翼達が暴れまり、ドーム状の結界を作り出していた。一歩でも踏み入れれば、人の体など細切れになることは必死だろう。
 一瞬、その挙動が止まる。天に、天にと伸びていく翼の木。そして。

 「―――――――――――――Wish upon a star」
 
 呪文のようにサラが呟くと、黄金の鎖が結界の縁をなぞるように顕現する。世界の裏側から幻想が引きづり出される。空想具現化(マーブル・ファンタズム)≠フ円環が作り出す絶対防御域。
 黄金の鎖と空を覆い付くさんとする巨大な翼。
 美しくもおぞましい―――それは天使のようだった。
 シオンはごくりと唾を飲み込み、一言。
 「化け物め…………!!」
 感じられる畏怖。内蔵が凍ったかのような寒気。人体を構成する一つ一つの分子が震えている。これは人が相対出来るものではないと、そうこれはまるで――――――
 ―――真祖(かみ)
 それに相対する志貴もまた、シオンと同じ感覚だ。気配を感じ取る死の嗅覚≠ェ告げる。あれはお前がどうにか出来るモノではない、と。
 アレは正に死の塊、七夜志貴の死そのものだ。抜け道など有りはしない。触れるだけで死に至る劇薬。同じ空気を共有していると思考しただけで自失しそうになる。
 「は、それがどうしたっていうんだ…………!!!」
 だが、志貴はそれら全てを意志の力でねじ伏せた。
 アレが化け物だというのならば、久遠寺アリスはソレを超える怪物だ。ならば、最低限アレを打倒しなければ、久遠寺アリスは殺せない。
 だが、どうする。
 アレは結界線を越えると同時に、敵意を持ったモノ全てを断絶する。中心点のサラまでおよそ50メートル。それに辿り着くまでに細切れになることは確実だ。自分の身体能力ではソレを超えられない。
 ならば、どうする。遠距離からの攻撃、不意打ち、奇襲。そのどれもが不適当だ。
 そして時間も無い。未だ鎖の量は増え続け、翼はその大きさを肥大化させつつある。アレが動き出したら、一巻の終わりだ。今しかない。
 残り時間はあと何分だ。何秒だ。分からない。思いつかない。
 ―――ああ、俺はここで死―――
 ドクン。
 心臓が吼えた。
 時間が圧縮する。
 精神が加速する。
 思考が広がる。
 出来ることは少ない。武器はナイフのみ。技量も足りない。練度が足りない。何もかもが足りない。

 否。否否否否否否否否否否―――――――――――――

 それは違うだろう、七夜志貴。
 勘違いしてはいけない。その思考そのものが間違っている。

 武器――――ナイフ一本あれば十分。
 技量――――七夜の暗殺術を忘れたか。
 練度――――足りないのならば己が命を賭けろ。
 出来ること―――――――お前はまだ寝ぼけているのか。

 さぁ、世界(まわり)を見渡すがいい。そして己が名を思い出せ。

 お前に出来ることなど――――たった一つしかないだろう?

 こくりと静かに頷く。
 志貴はナイフを逆手に持ち直し、視線は一直線にサラの方へと向ける。突き刺すように凝視する。
 そうして、弾けるようにサラへと向けて駆け出した。
 「―――――!?」
 竦んで動けないシオンが目を見開く。
 有り得ない動き、最もしてはならない動き。
 七夜志貴は、真っ向から、一直線に、サラ・ハミルトンへと全速力で駆けている。
 何故。シオンにあるのはそれだけだ。
 自らの高速思考を以てしても、アレの防御域を突破出来る術はない。0.1%あるか無いか、という確率云々の問題ですらない。その領域にすら辿り着いていない、計算そのものが出来ないのだ。このままでは確実に志貴は死――――――――――――
 「――――――――――――え」
 その思考にぶるりと震えた。幾つもある思考回路、そのほとんどがエラーを吐き出す中、一つだけ答えに辿り着いた計算式が在った。
 ある。幾つもの厳しい条件をクリアしなければならないが、確かに抜け道が存在する。
 その成功確率―――およそ10%。破格の数字。それだけあれば、志貴はきっと突破出来る。
 だが、それは、同時に。

 …………七夜志貴が廃人になる確率――――およそ97%。

 ――――彼の、崩壊を意味していた。
 「駄、」
 駄目だ、と彼を止めるため言葉を発した時には既に。
 志貴の足は、サラの結界を踏みしめていた。

 距離は五十メートル。
 今の志貴にして、約五歩必要な距離。

 ―――― 一歩。

 まず最初に襲い来るのは、空想具現化(マーブル・ファンタズム)≠ノよって形成された黄金の鎖だ。全身を打ちのめそうと志貴へと迫る。
 当たれば、死ぬ。
 その圧倒的に冷たい手触りに、背筋が震えた。
 視る――――殺す。
 バキン、と砕ける音がして、黄金の鎖は消え去った。
 脳髄が全て熱湯に変わったかのように熱い。

 ――――二歩。

 刹那以上の速度を以て、さび付きひび割れた翼の先端が、侵入者を切り裂かんと襲ってくる。
 切り裂かれれば、死ぬ。
 その圧倒的に冷たい手触りに、全身が泡だった。
 視る――――殺す。一回だけでは足りない。目の前に迫る全てを殺さなければ。
 振るう。振るう。振るう。
 殺す。殺す。殺す。
 左翼を殺し尽くす。
 感覚が、無くなった。

 ――――三歩。

 右翼が残っている。先ほどよりも速度が速い。現状じゃ間に合わない。もっと速度を上げろ。ギアなど考えるな。エンジンが焼き切れようが爆発しようが今は速度が必要。アクセルをベタ踏みする。
 無論、間に合わなければ、死ぬ。
 その圧倒的に冷たい手触りに、魂が震えた。
 視る――――殺す。もっともっとスピードを。狂ったように踏み込め。一閃にして十七つの線を描いた。右腕の筋肉が断裂した。幸い感覚は既に無い。
 右翼を殺し尽くす。瞬時にナイフを左手に持ち替える。
 頭痛が、無くなった。

 ――――四歩。

 左翼も右翼も消えた。これでサラを守るモノは無い。が、そんなに上手く事が進むわけではない。辛うじて背中に生えている翼が分解、鋭い切っ先を持つ羽となって、志貴を襲った。その数、おおよそ千。瞬時に判断。全て撃ち落とすのは不可能。ならば急所のみを守ることだけを考えろ。
 出来なければ、死ぬ。
 その圧倒的に冷たい手触りに、生の実感を感じた。
 視る――――殺す。体中の急所以外に、羽が突き刺さった。内、何十発かは体を貫通した。何も感じない。ただ無心に左腕を振るう。左腕の筋肉が断裂した。問題ない。後は、突き出すだけだ。
 守りは全て殺し尽くした。残るは、ヤツのみ。
 五感全てが消え去った(・・・・・・・・・・)

 ――――五歩!

 触感が消えた。聴覚が消えた。味覚が消えた。嗅覚が消えた。視覚が消えた。
 無音無明の世界に投げ出された。
 視界が虚無に塗れても、それでも視る=B
 まだ見えない。
 視る。
 まだ見えない。
 視る。
 まだ見えない。
 永劫に見えない。死≠ノ届かない。
 永遠を視る。死≠引きづり出す。
 見えない――――何故見えない。
 それは足りないから――――何が足りない。
 ベットは何だ――――これ以上賭けるものがあるのか。
 お前にその覚悟があるか――――何のことだ。
 お前に

 「何でもいい!! 俺の全部、持って行きやがれぇぇぇええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――視えた。


 自分を、亡くした。





 ざぁ、と一陣の風が、辺りを撫でた。

 志貴が握りしめるナイフは、サラの点≠寸分違わず穿っていた。

 あまりに圧縮された時間が解凍を始める。
 キン、と金属が砕けた時のような音が辺りに響いた。
 「――――!」
 シオンは見る。サラの体に罅が入っていくのを。
 続いて、腕、足といった四肢が砕けていく。ぼろぼろと削げて落ちていく肌は、金属のソレと同音を立てながら、その形を崩していった。
 ――――ああ、これが死か。
 シオンは至極客観的に、そう思った。

 「……――――When you wish upon a star」

 唄が、聞こえた。シオンの耳に、レンの耳に、確かにソレは聞こえた。
 その体を崩壊させながら、『偽・真祖(デミ・アルテミス)』サラ・ハミルトンが唄を紡いでいた。

 ――――星に願いを懸けるとき

 誰だって

 心を込めて望むなら

 きっと願いは叶うでしょう

 心の底から夢みているのなら

 夢追人が縋るように

 星に願いを懸けるなら

 叶わぬ願いなどないのです―――――

 「……それじゃあ、君の願いは――叶ったのか?」
 微かに、七夜志貴が独白のように呟いた。否、それは真実独白に近い。
 志貴の五感は、未だほとんど戻っていないのだから。
 視界は黒に塗りつぶされ、肌は麻痺し、鼻は匂いを感じ取れない。ただ聴覚のみが、ゆっくりと――――本当にゆっくりとした速度で感覚を取り戻していくのみ。
 まるで世界が志貴に対して、この刹那の唄を聞き取らせてくれているようだった。
 サラはくすりと笑い。
 「ええ、そうね。そうかもしれない。――――私はずっと、貴方といたかった。私の願いはそうなんだと思ってた。でもね、本当は違ったみたい」
 全てを諦めたサラは、それでも幸せを願った。彼を愛したが故に―――静かな生を、再び願った。
 だが、それに対する答えを志貴は持っていない。
 「そんなことは、もう関係ない。だって、私の願いはもう叶っていたんだもの(・・・・・・・・・・・・・・・・)
 
 僕はどうしても無視できないんだ。泣いてる人、困っている人、それがどんなに偽善だとしても、自分が正しいと思ったことを裏切ることは出来ない。サラ、いつか君にも分かるときが来るよ――――

 ――――ねぇ、ハリー。私も見つけたよ。裏切ることは出来ない、私が生きた証を――――

 「私は、ずっと自分が嫌だった。ずっと依存し続けるだけの自分が嫌だった。でもね、私は貴方を助けることが出来た。誰かを、助けることが出来た。ハリーのように私はなれたのよ」

 ――――ありがとう。貴方を助けられて、本当に良かった

 それは確かな生の証。『生きている』という実感。今まではそれが感じられなかった。だが、今、七夜志貴≠ニいう現実に確かな触感として存在している。
 「だけどね、私はそこで止まらなかった。貴方を愛してしまった。それがせっかく手に入れた玩具を手放したくない――――そんな独占欲だとしても、私は貴方と離れたくなかったのよ。だから、間違ったとするなら其処。…………私は、やっぱり貴方と出会う前に願った通り、誰とも知れぬ場所で、ひっそりと死ぬべきだった」
 「――――どうして、そんなことを」
 間違い、だなんて表現をするのか。
 そう志貴が問うた時、サラは少し哀しげに眼を細め、言った。
 「だって…………貴方をこんなにまで追い詰めてしまったから――――」
 それは身体的なことか。それとも精神的なことか。
 多分、両方だ。
 サラはせっかく手にした『生の証』を自ら壊そうとしていたのだから。
 生きた証を肯定し、愛を否定する。
 それは酷く――――滑稽だ。
 少なくともサラにはそう思えた。
 どうしようもない袋小路に追い詰められたサラ。
 死にたいけど、生きていたい。生きていたいけど、死にたい。
 その身が『偽・真祖(デミ・アルテミス)』という業を背負っているが故の、二律背反の願い。
 彼女には今、何も無い。愛した恋人も、憧れた理想も、万人が持っている生すらもその身からこぼれ落ちていく。
 それが、今まで何かに依存し続けてきた、彼女の破滅だった。
 その生き方は、死に瀕した今でも変わりはない。
 そう、彼女は未だ、願っていた。縋っていた。依存していた。
 願いを唄に込めて。
 Wish Upon a Star。
 星に願った、最後の救い。
 それは―――

 「――――貴方に殺されることだった」

 その願いを、星に叶えて貰って、良かった。
 そう呟いて、静かにサラ・ハミルトンは、その人生に幕を下ろした。愛した青年の名も知らぬままに。
 「…………――――君は馬鹿だ。星に願いを掛けるなんて、そんな下らない幻想に、最後まで縋るなんて」
 志貴は泣いた。もう泣かぬまいと心に決めたのにも関わらず、その両の頬は涙に濡れていた。
 心にあるのは哀しみではなく、嘲笑と虚無しかなかった。
 アルクェイドを救う――――その願いを叶えるために何もかもを捨ててきた自分は、幻想に縋ることの無意味さを何よりも理解している。それなのに、彼女は最後まで星なんていう子供じみた幻想と、名も分からない自分に縋ったのだ。これを滑稽と言わずして何を呼ぼう。
 何よりも彼女を救う術を何一つ持たずに、殺すことしかできなかった自分が滑稽だった。
 アルクェイドとサラ、その両者は救いがない≠ニいう点で限りなく近しい者だ。それを結局何も出来ずに死なせてしまった。殺してしまった。彼女にとって最後の救いは死しかないとそんな諦観を以て。
 胸に空いた空白。たった一週間ほどの付き合いで、自分が記憶がなかったのにも関わらず――――その空白は大きかった。
 もしこれがアルクェイドなら、一体どれほどの虚無が自分を襲うのだろう?
 「そうだ―――俺は、きっと君のように幻想に縋りたかった」
 どうして、彼女のことをこんなにも否定したがっていたか、やっと志貴は理解した。
 アルクェイドとずっと共にいる=Aそんな有りもしない幻想を信じて、ずっと生きていたかったのだ。いつかきっと共に生きていけるという幻想の中に居たかった。
 だがそれは叶わない。既に彼は知ってしまった。変わってしまった。遠野志貴から七夜志貴へと。

 志貴。もし私に『そのとき』が来たなら――あなたが、殺して。私を殺した責任取ってもらうんだから

 もう、戻れない。

 その事実に、志貴はアルクェイドが居なくなって以来、初めて、泣いた。
 ―――星に願いを。
 希望を斯う彼女の唄が、いつまでも胸の中で残響を繰り返す。

 ぐらり、と志貴の体が崩れ落ちた。
 無数の切り傷、打撲、極度の集中による体力の低下。何よりも―――
 ―――直死の魔眼の、フルドライブ。
 全力全開連続使用。そう、サラの空想具現化と多重羽による防御壁を突破するにはソレしかなかった。
 絶対的な暴力の前には小細工など通用しない。ならば、どうするか。簡単な話だ。暴力を受ける前に、ソレそのものを消し去ってしまえばいい。
 サラ・ハミルトンを打倒するには、そうするほか、志貴に方法は残されていなかった。
 無論、言うまでもなく代償は大きい。
 そもそも直死の魔眼で死を捉えられるモノは基本的に人間に対してなのだ。それ以外のモノとはチャンネルが合わない。無理に合わせようとすると、そこに齟齬が生じる。
 齟齬はエラーとなり、脳髄を焼き尽くす。
 ましてや今回の相手は『偽・真祖(デミ・アルテミス)』―――それも限りなく真祖(ほんもの)に近い化け物。
 代償が無いはずがない。
 五感どころか、人格そのものすら、無事かどうか――――――――――
 「志貴!」
 シオンは倒れた志貴に駆け寄った。
 傷が酷いのは勿論、何よりも気になったのはその視線。虚ろな瞳は、何処も見ていない。いや、何処もというよりは何も、だ。
 ―――まさか。
 「貴方……視力が……?」
 「大丈夫だ。必要なモノは見えている(・・・・・・・・・・)
 その静かな声に、シオンは背筋に寒気が走る。
 あまりにも淡泊な響きには、喜怒哀楽、人の持つ感情という要素が一切感じ取れなかった。
 ―――感情を亡くした人間。果たしてそれはヒトと呼べるのだろうか。
 よろり、と志貴は立ち上がり、そして。
 「まだだ……まだ、敵は、居る」
 双子の『偽・真祖(デミ・アルテミス)』のことか、とシオンが思考した直後、その僅かな時間の間隙を縫って、志貴は駆け出した。
 速い。まるで傷を負っていないかのような―――否。
 ―――傷という存在を知らないかのような(・・・・・・・・・・・・・・・・)速度で、志貴は夜の帳の中へ溶け込んでいく。
 「志貴! ―――っ」
 すぐにでも追いたかったが、レンのことを放置するわけにもいかない。

 伸ばした手は、何処にも届かず、ただ暗闇を掴むのみ。

 夜の暗闇を、ただ孤独に志貴は駆ける。
 五感は未だ、完全には復活していない。味覚、触覚は完全に断絶。聴覚、嗅覚は辛うじて感じ取れる。―――視覚は、閉じられていた。
 だが―――
 「………十分だ。コレさえあれば、それで十分だ」
 彼に、唯一確かだと感じ取れる感覚器官。化け物を殺すための力。全ての始まり。
 直死の魔眼=B
 生きているモノなら神でも殺す、その眼のみが今の志貴の全てだった。
 ―――崩壊が近い。
 自らにそろりと忍び寄る死という名の終わり。
 直死の魔眼は己に差し迫った死さえ映すのか、志貴は確かにソレを感じていた。
 そして、同時に。
 アルクェイドの失踪から始まった、この事件の終わりもまた、等しく感じ取っていた。
 「―――それまで、持ちさえすればいい」
 元より理解していた。
 後戻りする過去も、何かを掴むはずだった未来すらも、自分には残されていないと。
 だから何も感じない。否、ソレを感じ取れるだけの自我(おのれ)など、既に無い。

 ―――だから。

 「大丈夫だ。…………大丈夫。『偽・真祖(デミ・アルテミス)』のことも、久遠寺アリスのことも、その後のことも、全部。全部、俺が何とかしてやる……………………!!!!」
 
 ―――正義の味方などという存在は。

 「うん。そうね。こいつだけじゃ頼りないでしょ? だから私も協力する。きっと何とかなるわ。ね?」

 ―――殺人貴たる己にとって、許容できるはずもなかった。

 ドクン。
 死んだはずの感情(しんぞう)が、吼える。
 アレは許していけないモノだ=Aと。
 助けている。
 斃さなければならない敵を。
 自らの主観を取り除いたとしても、『偽・真祖(デミ・アルテミス)』は人を食い殺す化け物のはずだ。それを助ける?
 例え、ソレが子供の外見をしていても、人食いの化け物には変わりない。
 ―――馬鹿げている。
 アレを助けると言うことが、どのような意味を持つのか理解しているのか。
 世界の敵≠赦すということは即ち―――全てを助けるということだ。
 代償を払わなければ何も手にすることのない世界で、そんなことが罷り通るはずがない。
 それとも、目の前の、あの男は―――正義の味方だとでも言うのか。

 ふざけるな――――!

 あまりの理不尽に腹が立つ。
 自分は何もかも――己すら――を捨てて、たった一つを助けようとしているのに。
 この男は。
 この人間は。
 何も支払わずに、全てを手に入れようとしている。
 そんな傲慢は許せない。
 そうだ。もしそんな傲慢が罷り通るというのなら、俺のやってきたことは一体何だったんだ。
 家族を捨て、友人を捨て、名前を捨て、自分そのものすら切り捨てて。
 それでもただ一つだけのモノを手に入れようと足掻いているのに――――
 す、と志貴の目が細まった。
 目の前にいるのは『偽・真祖(デミ・アルテミス)』。
 久遠寺アリスの手駒であり、人を食う化け物だ。
 サラ・ハミルトンを否定したのならば、ソレ全てを否定しなければならない。
 久遠寺アリスは、敵なのだから。

 敵は、殺す。

 それのみが己に残された唯一なのだから。
 志貴は手に持った七夜≠フナイフを投擲する。
 全身全霊、体を捻り、全力で投擲された死を穿つ刃は――――『偽・真祖(デミ・アルテミス)』の胸へと寸分違わず突き刺さった。
 助けようとした男が驚愕に目を見開き。

 「あぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

 吼えた。
 それは哀しみか怒りか。
 渦巻いた感情が辺りに吐き散らかされる。
 そして、ナイフが投擲された軌跡をなぞるように、志貴の方へと振り向いた。
 ――――その視線は、殺気に塗れていた。

 そうだ。俺はお前の対極であり――――

「―――――――――――――――お前の敵、だ」

 憎むべき、悪に他ならないんだよ。









 ―――――――――――――――そして、対極は共鳴する。

 

.......to be continued

next>> Ground Zero "R2"





 / meaningless tips

 これは、既に終わった物語。サラ・ハミルトンが持っていた物語の断片だ。
 物語は記憶となり、その記憶を持つモノも、既に死んだ。
 だから、これは何の意味もない。
 世界の奥底へと埋もれていった、とある出会いの物語。
 これは、その、断片。

■□■□■□■□■□■□

 こんにちは、貴女が、ハリーの言っていたサラ・ハミルトンさん? ようこそ、混沌の地アメリカへ。歓迎するわ

 だが、相手は私の想像を遥かに超えていた。まさか空港に降り立った途端に、彼女がニコヤカに笑いかけてくるなんて思いもしなかったのだ。

 私は振り向き―――――――
 それから私は。それから、それから―――――――――――――

 それから、私は問うた。
 どうして私のことを知っている、貴女がハリーの言っていた久遠寺アリスという人物なのか、と。そしてハリーはどうなったのか、ということを。
 彼女は静かに首を振り。

 そんなに一度に言っても分からないわよ。まぁ、まずは落ち着きなさい

 そう言うと彼女は右腕で眼鏡を外し――――

 ――――左腕(・・)で、煙草を取り出し、銜えた。

 ふぅ、と実に旨そうに煙を一つ吹き出して。
 「さて、サラ・ハミルトン。君は、ヒトを超えた存在というものに、興味はないかね?」
 ニヤリと嗤った。

 ――――それは悪魔のような笑みだった(・・・・・・・・・・・・・・)

 / meanigless tips -end

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